茶屋のだんぢり漫遊録

目次

和太鼓が、生まれて初めてその音を奏でる瞬間!




だんじりとは切っても切れない関係にある、太鼓!

だんじりのある所、必ず太鼓が積み込まれ、各地に伝わる鳴物、お囃子を演奏します。


今回は、その太鼓の『皮張り作業』を、ノゾキミ、ノゾキミ。






ある日のこと・・・

ワタクシが個人的にお付き合いのある町が太鼓を新調すると聞き、そのつながりで見学させてもらいました。



太鼓用語で、叩く面の事を『唄口』と言いますが、一般的に太鼓の大きさは、この『唄口』の直径で言います。



↑これは張り替え用に持ち込まれた古い太鼓。



今回見させて頂く太鼓は、唄口の寸法が二尺五寸

だんじりに用いられる太鼓は、分類では『長胴太鼓』と呼ばれているものです。





最近新調される太鼓の中でも、特に泉州地方のだんじりに使われる太鼓などは、胴に膨らみの少ない寸胴の太鼓が多いですが、この太鼓は、胴の中央に膨らみのある、いわゆる『みかん胴』と呼ばれる太鼓。



さて、作業を見ていきましょう。


今回見させてもらった作業は、もう太鼓の仕上げ段階となる、『本張り』と呼ばれる作業。

この『本張り』で、その太鼓の音が決まるので、受注製作の太鼓の場合、この作業を行う時には依頼主が立ち会います


音の仕上がりを確認するためです。



作業場にて、特殊な台の上に置かれた胴に、もうこの太鼓の形に出来上がった皮をかぶせます。



皮には『耳』があり、そこに棒を通して、ロープを引っかけて行きます。



ロープは下の台から伸びた足にも引っかけられ、ねじって締められて行きます。


そして太鼓の四方を足場板で囲み、作業の準備が整いました。






実を言うと『太鼓づくり』というものは、ここに到達するまでに様々な工程があるのですが、その一つ一つの作業を、普段ワタクシ達が目にする事はあまりありません。


太鼓を作る最初の工程はまず『胴作り』から始まります。




二尺以上の太鼓を作る場合、樹齢100年以上のケヤキを使い、中をくり抜き、胴の形に仕上げて、そこから約3年間は乾燥させます。

次に皮は、国産の牛の皮を使います。



塩と薬品で油を抜き、乾燥させてカチカチの状態の皮を仕入れ、そこに水分を含ませると、皮は再び動物の皮に戻り、柔らかくなります。

その状態で再び余分な脂を抜きながら、皮を一定の厚みに梳いたりするのですが、この一連の作業を『なめす』と言います。

こうして『なめし』た皮をある程度乾燥させ、まだ水分が少し残っている状態で、本来の太鼓の大きさと同じサイズの木枠にかぶせ、ロープで縛り、太鼓の形に馴染ませます。

この作業を『仮張り』と言い、この状態で一週間乾燥させると、皮は太鼓の形に沿った形状で固まります。

ここまでの工程を経て、ようやく『本張り』を迎えるのです。



さて、依頼主の方が見守る中、本張り用に仕上がった皮をかぶせ、まずは大きな槌を何度も振り下ろし、皮の曲面を、太鼓の『唄口』の角にピッタリと密着させます。



そしていよいよ、皮を伸ばしながら張ってゆくのですが・・・


この皮の伸ばし方は地方によって色々あります。


太鼓の上に人が乗って、足のかかとを使って伸ばしてゆく方法もありますが・・・


大阪ではこうして、小槌を使って面と側を叩きながら、均等に伸ばして行きます。



そして太鼓を設置している台の下にはいくつものジャッキが台を支えており、このジャッキを上げて行く事で太鼓を持ち上げ、皮の耳を引っ張るのです。




小槌で叩く係の職人さんは、独特のリズムと打ち方で太鼓の周囲を回りながら皮を伸ばして行きます。

小気味よいリズムの音が作業場に響き渡る中、最初はボコボコという感じだった音が、少しずつ張りのある、太鼓本来の音に近づいて行くのが分かります。



ある程度張ったところで手を止め、依頼主に実際の音を聞いてもらい、この後も完全に乾燥すればもう少し音が乾いた音になる事も説明した上で、依頼主に納得してもらえれば、音が変わらぬ内に『鋲』を打ち込み、皮を固定します。



もし依頼主が音に納得しなかった場合は、しばし同じ作業が繰り返されます。


こうして太鼓の片面が出来上がりました。



ここまでで1時間弱の作業。


やがて太鼓をひっくり返し、もう片面も同じ工程で張って行きます。





この小槌を使って伸ばしてゆく方法は、依頼主に音の変化を感じ取ってもらう事と、音を聞かせて気持ちを高揚させるのと、二つの目的があるそうで、いわゆるパフォーマンス的な要素でもある様です。



ワタクシは過去にも何度かこの『本張り』の作業現場を見学させてもらった事がありますが、何度見ても興味深く、飽きて来ないです。



やがてもう片面も同じように張り上がり、こうして一個の大太鼓が完成しました。

張り上がった太鼓を、依頼主が何度も音を確かめます。



これが、太鼓が生まれて最初に出す音です。


その瞬間に立ち会えることは喜びでもあります。




たまにはこんなブログネタも良いでしょ?

またこうした鳴物、お囃子に関連したブログも、増やしていこうかと思っております。

今回は太鼓が生まれて最初の音を出す瞬間をお届けしました。

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