茶屋のだんぢり漫遊録

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天神祭のだんじり体験記 ~浪速の夏の夢物語~《第4回》

『天神祭』の地車講に曳き手として参加した『体験記』の最終回です。





掛け声が囃子に合わせないなど、散々文句タラタラ並べていたワタクシも、いざ船に乗り換え『船渡御』に移行した途端に上機嫌!



『地車講』の船は大川を上流へと進みます


水面から見る大阪の街はまた違って見えるもの。

天満橋をくぐり、『桜宮橋(通称・銀橋)』が見えて来ます。




桜宮橋(銀橋)は、この『船渡御』の航行コースの中で最も低い橋で、ご覧の通り手が届いてしまうほどの低さ!




続いて『ドンドコ船』の子供版とすれ違い。




『催太鼓』を運営する『太鼓中』を、天神祭で最も権限を有する『講組織』と紹介しましたが、水の上では、『太鼓中』よりも権限を持つのが『ドンドコ船講』で、水上の王様とも呼ばれています。


この『船渡御』に参加する各船とは別に、天神祭の期間中、大川から道頓堀までを自由に航行できる権限を持った『列外船』というのがあります。



↑かつての『列外船』だった『鯛船』も、今は漁業組合の船になっています・・・



『落語船』『文楽船』の他に、かつては活躍した『お迎え人形船』や『鯛船』に加え、その列外船でもトップを張るのが『ドンドコ船』。

多くの船の中でも唯一、人力で漕いで動かす、男気あふれる船です。



またこの『船渡御』には、天満宮から『陸渡御』として出発してきた列とは別に、協賛企業が出す『企業船』というのもたくさんあって、『陸渡御』から移行してきた船が天神橋から出航するのに対し、『企業船』は反対側の毛馬あたりから出航し、天神橋から出航してきた船と大川ですれ違う形をとります。


こうして様々な船とすれ違う度に、『大阪手打ち』を交わす、これも大阪夏祭の仕来たりの一つです。

とある『企業船』には、その企業の要請で『だんじり囃子』を載せている船もあります。





こんな感じで、船主さんも祭り衣装。





橋の上にはたくさんの見物人。
その見物人に向けて、やたらと『大阪手打ち』の発声をするのは、この船に『お客様』として乗り込んでおられた、なんとワタクシの歯医者さんでした!



まぁ、某だんじりに参加しておられる方なのですが、なかなかのツワモノやね・・・




天神橋から出航した船団の先頭を行く、『太鼓中』の船とすれ違うと、もう折り返し点も間近。




そして篝火が赤々と燃えさかる、毛馬の折り返し点。



3隻連結の船は、ここをゆっくりと反転し、下流へと向きを変えます。



帰り道、ようやく日没を迎え、いよいよお待ちかねの『奉納花火』が打ち上がります!



火と、水と、船と人とが一体となり、これぞ『浪速の夏の夢』・・・




『天神祭』と言えば、すぐにこの『奉納花火』が取り上げられ、また天神祭に出かける人々の多くも、この『奉納花火』がお目当てなんですが、『天神祭』の本来の姿は、この『渡御』にあります。


菅原道真の御霊(みたま)が、年に一度だけ氏地を見て回られることを『御神幸』と呼びます。

その御神幸に際し、氏子各位が『講』を組織し、それぞれの芸事や催し事を携えて、この『御神幸』の警護をしながらお供をすることを『渡御』(お渡り)と呼びます。

そして『陸渡御』として陸路を巡った後、舞台を水上に移して『船渡御』とした事で、その華やかさが一層浮き上がり、それを彩るのが『奉納花火』となる訳です。




まぁ、難しい講釈はここまでにして、それにしてもワタクシは花火の写真を撮るのが下手クソです・・・





夜の9時頃になり、ワタクシ達を載せた『地車講』の船も、再び天神橋の船着場に着岸しました。



やがて上陸し、据え置かれていた だんじりの元へと馳せ参じます





これより『宮入り』へと向かうのです。





この『宮入り』も、先頭を行く『催太鼓』のパフォーマンスがあるため、なかなか前に進みません。

その間、やっぱり お囃子は鳴り止まず、また踊りも継続しています。




やがてだんじりは参道を進み、天満宮の山門をくぐって宮入りを果たします。




『催太鼓』を納めた『太鼓中』と大阪手打ちを交わし、再び『地車講』のテントの中へと納まっただんじり。




最後の手打ちの後、我々曳き手はこれにて解散。
衣装を返却します。



天満宮境内では後続の『講』による宮入りが続き、やがて菅原道真の御霊を載せた『御鳳輦』が宮入りすると、一旦お囃子も止められます。

厳粛な空気の中で『神遷しの儀』が執り行われ、もとの本殿に御霊が還されると、『浪速の夏の夢』も、終焉を迎えます。







さて!・・・数回にわたってお送りしてきた『天神祭のだんじり体験記』、いかがでしたか?


誰もが経験できる事ではないので、この貴重な経験を今回は『特別寄稿』の形で詳しく書かせて頂きました。



季節はお盆を迎え、これが明けるともう一気に『岸和田モード』となって行きます!

まだまだ暑い日が続きますが、やがて来たる9月に向けて、気持ちを高めて参りましょう!



ひとまず今回はここまで~!


信濃屋お半悠遊!だんじり録
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