茶屋のだんぢり漫遊録

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『笹竜胆に揚羽蝶』…春木宮本、試験曳きの早朝を走る!

台風18号も、関西では被害がなくて何よりでした。

急いで献燈を降ろした各地域の各町も、ご苦労さまでした。



今年は9月に入る前から、まるで梅雨に戻ったかのような雨続きのお天気ですが、これからお話するこの日も雨でしたね~。


9月6日(日)・・・




そう、岸和田の『旧市地区』『春木地区』にて、待ちに待った試験曳きが行われましたが、そんな日の早朝から、入魂式を行なった町もあります。


そのひとつ、岸和田市・春木地区の、春木宮本町のだんじり。




平成3年に新調されただんじりで、大工は《植山工務店》植山義雄、彫師は《木彫 岸田》岸田恭司 師と、《木彫筒井工房》一門。





今回の修理も《植山工務店》にて行われ、本体の洗いや締め直しに加え、一部『枡合』の彫り替えも行われました。



午後から試験曳きを控えた9月6日の午前6時、弥栄神社へと宮入りし、入魂式が行われました。





この春木宮本町のだんじり、新調当時は非常に話題を振りまき、
『平成の名だんじり第1号』
と呼ばれただんじりなのです。

ワタクシ自身も思い出のあるこのだんじり。
入魂式を拝見するのは新調の時以来、24年ぶり。




『平成の名彫師』と呼ばれ、今なお活躍中の岸田恭司 師の時代はここから始まったと言っても過言ではなく、この春木宮本町のだんじりが、岸田師の独立後、初めて責任者となり取り組んだ作品であり、岸田師の『出世だんじり』であります。




『笹竜胆に揚羽蝶』・・・源平合戦統一彫りという触れ込みも当時大きな話題を呼びましたが、中でも正面土呂幕の、『福原御所にて平清盛が奇異を見る』の場面は、岸田師が歌川國芳の錦絵を手本にアレンジを凝らし、苦心を重ねて彫り刻んだ岸田師の代表傑作です。



↑正面『番持ち』の琵琶法師は、今もこうして琵琶を抱え、『源平合戦』の栄枯盛衰を弾き語っています。

また当時の春木地区は、昭和61年に松風町が新調だんじりにて新規参入を果たし、昭和63年には戎町が大型だんじりを新調し、一躍センセーションを巻き起こしていました。

いわゆる『平成の新調ブーム』が始まった頃で、この春木宮本町のだんじりは、《植山工務店》が戎町に負けじと作事し、《木彫 岸田》を押し上げんと奮闘したという、様々な逸話を残しただんじりなのであります。





松風町がキッカケを作り、戎町が扉を開けた『平成の新調ブーム』は、この春木宮本町で一気に夜明けを迎え、春木地区ではそれからの数年間でほとんどの町がだんじりを新調しました。


そんな『時代の寵児』とも言える春木宮本町の入魂式が久々に行われるとあって、ワタクシも午後からの試験曳きを前にワクワクした気持ちで見に行きました。




宮入り時はゆっくり入っただんじりも、入魂式を終えての宮出しから遣り廻しを解禁




いきなりズバッと鋭い遣り廻しを披露して道路へと踊り出ただんじりは、高松診療所の角から海手方向を往復し、春木年番本部前の交差点から駅前へとやって来ました。



駅前と、名物の『ラパーク前』での遣り廻しを見事に決め、町内へと到着。






普段の春木地区での入魂式なら、駅前→ラパーク前のコースをもう一周ぐらい行く事が多いのですが、この日は午後に控える試験曳きに備え、一周で無事にお披露目曳行を終えました。




『岸和田だんじり祭』はモチロン『旧市地区』が有名ではありますが、こちら『春木地区』にも多くの名だんじりが存在し、『旧市』に負けない祭を行います。



『春木地区だんじり祭』にも、どうぞ足を運んでみて下さいね~!


信濃屋お半悠遊!だんじり録
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