鶴見西…しかし今はその町割りも・・・

先月からずっと、3月19日(日)に入魂式やお披露目の行われただんじりをご紹介してるんですが・・・
まぁ今回もそうなんですけど・・・
ずっと南河内のだんじりをご紹介して来ましたね~、『千早赤阪の60周年』から始まって河内長野の高向上町やら藤井寺市の北條やら・・・
今回はそこなら抜け出して、このだんじりをご紹介しましょうか。

大阪市は鶴見区の、鶴見西のだんじりです。
この写真は今回《植山工務店》での修復を終えて、3月5日(日)に搬入された時のもの。

この時の写真を見ながら、お話を進めて行きたいと思います。
ここ鶴見区は、大阪市の東の端に位置し、昭和49年(1974年)に城東区から分区されて生まれた区です。

区名の由来にもなった『鶴見』は、区の境目となる内環状線のすぐ東側を『中高野街道』(別名:放出街道)が南北に貫き、ギリギリ摂津と言われていますが、祭礼文化圏としては『中河内』に分類されるかも知れません。
ちなみに鶴見の隣村である横堤は完全に『中河内』であり、その境界線は、この鶴見の氏神である『鶴見神社』のすぐ東横の道がそうだと言われているのですが、確証がありません。

元々は『河内湖』のほとりに面する土地と思われ、道も途中で寸断されていて、ハッキリした境界線が描けないのが実情で(中高野街道すら途中で直角曲がりをしており、それが旧道とは思いにくい)、鶴見が厳密にどちらに属するのか測りかねております。
そんな鶴見の土地ですが、かねては東之町、西之町、中之町と3台のだんじりがあり、毎年秋の祭礼をメインに行われていました。

祭礼文化圏としては『中河内』に属すると申し上げたのは、この鶴見の祭礼が昭和の終わり頃まで、浴衣の下には女性物の長襦袢を着込み、顔には化粧を施し『女装』をしてからであります。
それらの衣装はおおむね、彼女や奥さまからの『借り着』であり、そうした祭礼文化は『摂津』のものではないのであります。
現在でも東大阪市の稲田地区には、そうした女装の風習は残っており、まぁもっとも現在の稲田の祭礼は女装が発展した『仮装』になっていますが、そうした風習は『中河内』の祭礼文化なのであります。
現在の鶴見の祭礼は、法被を主流とした一般的な祭礼衣装に落ち着いており、かつての様な奇抜な派手さは鳴りを潜めております。

さて、かつては東之町、西之町、中之町と3台のだんじりが存在したと申し上げましたが、それは大正時代までのお話。
大正末期頃に中之町のだんじりは現在の守口市・南寺方が購入し、以来、中之町ではだんじりが途絶えてしまいます。
その元・中之町のだんじりというのが、昨年、南寺方が現だんじりを新調するまで活躍していたもので、現在は門真市・下馬伏のだんじりとなっています。

さて、昭和の間は東之町、西之町として曳行されていた鶴見のだんじりですが、いつしかその町割りもハッキリしなくなり、昭和の終わり頃にはすでに現在の様に、『鶴見地車保存会』というひとつの組織で2台のだんじりを維持管理する様になり、だんじり小屋もこうして2台まとめて格納される様になりました。

このだんじり小屋のある場所は、鶴見小学校の北隣で、氏神である鶴見神社からは北西方向へ随分と離れています。
この場所は元々御旅所のあった場所だと思われ、地理的にはおそらく西之町に当たると思われるのですが、その町域がどのあたりまでなのかは不明です。

さて今回修復された西之町のだんじり、厳密には『元・西之町』と表記した方が良いのかも知れません。

製作年代、大工とも不詳ですが、彫師は《辻田友次郎》であり、そこから推察するに、おそらく製作年代は明治期であろうと思われます。

彫物を《辻田》一門が手掛けただんじりの中で、このだんじりと背格好などが類似しただんじりはいくつか思い当たります。
旭区の生江、長瀬の横沼、橿原市の南垣内、三田市の下相野など。


どれも屋根の形状や柱間口などの寸法取り、木造りの仕方などに類似点があり、そのどれもが、製作大工の特定に至りません。

もしかしたら、《辻田》自ら大工仕事もしていたんじゃないのか?・・・などという憶測まで立ってしまうのですが、それはあくまでも妄想の域を出ません。

いずれにせよ、数ある『大阪型』のだんじりの中でも、大型ではないが見栄えの良いだんじりとして、我々見る者を魅きつけるだけの魅力のあるだんじりです。

平成15年に一度《植山工務店》にて修復を施し、その時に台木の新調交換ならびに、小屋根の拝懸魚、隣懸魚を彫り替ええています。

今回の修復は主に、洗いと締め直しになると思われます。

3月19日(日)には、隣接する鶴見小学校にて入魂式が執り行われ、午後から周辺地域をお披露目曳行されました。

鶴見にまつわる色々な話を掘り下げてたら長くなりましたね。
鶴見地車保存会の皆さん、この度は西之町だんじり修復完成、おめでとうございます。

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