茶屋のだんぢり漫遊録

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去年の年末に立ち戻ろう…《其之壱》




昨年の12月は多忙を極めておりまして、ブログの更新回数が至りませんでした。


今回はその12月中にUPしようと思っていたネタをご紹介しようと思うのですが・・・


その第1弾としてまずはこちら!



富田林市の若一のだんじり。


こちらは今年に新調だんじりの完成を控え、昨年12月3日(日)に昇魂式ならびにお披露目曳行が行われました。

今回はそのリポート。



『若一』とは現在の住所区分で言う『若松一丁目』の事で、近鉄・富田林駅の駅前を中心とした市街地にあたります。


若一のだんじりに参加する人達の法被には『富田』の文字が染め抜かれてあり、これは若一の旧町名である『富田町』を表しているそうです。



つまりこの町が『富田林』の語源となった地域である事はピンと来るのですが、富田林市の歴史をざっと紐解いてみても、明確な富田町の記述には出会えませんでした。



もともと、古墳時代と呼ばれる時代から石川沿いに人々の往来と居住のあった地域で、南北朝時代には楠木正成が山城を築き(おそらく現在の富田林市山城のあたり?)、『東高野街道』が南北に走ると交通、交易の要所ともなった土地であります。



16世紀の永禄年間に、京都の興正寺門跡第16世・証秀上人と呼ばれる僧侶が、『富田の芝』と呼ばれていたこの土地を買い受け、寺と町衆の協力によって寺内町が造営されたそうです。

富田林の寺内町の歴史はそんなにも古いんですな。


現在の富田林市の沿革は、明治22年の町村制施行に伴い、石川郡富田林村と近隣の毛人谷村を併せて『富田林村』として発足、のちの明治29年に町政を施行して『富田林町』となります。



昭和17年に近隣の新堂村、貴志村、大伴村、川西村、錦郡村(現在の錦織)、彼方村を合併して『富田林町』として大きくなり、昭和25年に市制施行で『富田林市』となりました。




そうした歴史の中で、富田林の中心としての役割を果たしてきた『若一』は、祭礼に於いても古い歴史を持っている様ですが、その祭礼の歴史はと言うと、詳しい記述には出会えなかったのですが・・・


こちら若一のだんじり、製作年代も大工も彫師もハッキリしません



ご覧の通り『石川型』のだんじりで、かなり古いと思われる印象。



普段の祭礼でも、若一のだんじりは昼間も提灯で飾っているイメージがあり、こうした飾り物のない姿見を拝めるのは、大変貴重な機会ではないでしょうか?

ワタクシ自身はこの南河内の祭礼日は別の地域の祭礼に身を置いております故、この若一の祭礼を目の当たりにしたのは遠い昔なのであります。


最近見た『美具久留御魂神社』への宮入りの動画では、提灯の飾り物は付いてたかなぁ?…なかったかなぁ?・・・ぐらいの印象なのです。


こうして姿見を拝見すると、獅噛みなどの彫物には彩色が施されてあり、これはおそらく昭和の終わり頃にされたものではないかと思います。



幕末から明治期にかけて製作された『石川型』のだんじりは、『新堂大工組』と呼ばれる組織に身を置いていた大工によるものが多く、おそらくこのだんじりもその1台なのかな?・・・と推察されます。



一説には明治11年に現在の大阪狭山市の半田村から購入したとも云われており、その出自も不詳なのでありますが、それでも140年近くこの地で曳行されて来ただんじりであり、南河内を象徴する1台である事は間違いないでしょう。



さて、そんな長きにわたり若一にて活躍してきただんじりが、お役御免となる日がやって来ました。

若一のだんじりと言えば、忘れちゃならないのが『縦しゃくり』であります。



南河内のだんじりと言えば、名物の『曳き唄』に伴い、だんじりを左右に揺らす『横しゃくり』が有名ですが、ここ若一のだんじりは、だんじりを前後に大きく揺らす『縦しゃくり』を古くから行なってきました。



まぁ『天神祭』の『催太鼓』が行う『からうす』の様な動きなんですけど、平面の台の下に丸太ん棒を入れてしゃくりやすくして行う『からうす』とは違い、4輪車であるだんじりの前と後ろを交互に差し上げる『縦しゃくり』は、非常に激しいだんじりアクションであると同時に、だんじり本体に及ぼす衝撃も相当なもの。



これを行うだんじりはこの若一と、隣接する新堂のだんじりの2台だけ?・・・探せばまだある?・・・かも知れないですが、伝統的に行なっているのはその2台じゃないですかね?



この昇魂式の日は、長年活躍してくれただんじりの労をねぎらうかの如く、最後の『縦しゃくり』が披露されました。



製作されてからおそらく一世紀半は経っていると見られる年代物のだんじり、その歴史に幕を下ろしたこの日、だんじりは岸和田の《地車製作 隆匠》へと運ばれて行きました。




今年完成予定の新調だんじりは、その《隆匠》にて製作中!


その完成が今から楽しみであります。


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