かつての堺のだんじりが今も息づく場所

3月4日(日)に行われた今年最初の入魂式の話題も終わらん内に、また先日、次の入魂式が行われました。
が…!
ブログの方は予定通りのネタで進めて参ります。
前回は西淀川区・野里西之町をご紹介したので、今回は尼崎市・丸嶋のだんじりに触れて参りましょう。

入魂式当日は、先に野里西之町が神社へ戻って来るまでを見届けてから尼崎へ向かいましたので、そこは入魂式や記念式典がほぼ終わった頃合い。
その時間帯を利用してだんじり本体を鑑賞させて頂きました。

このだんじりは元々、堺市は久世地区の平井が新調したもので、製作年代は昭和57年。
大工は《池内工務店》池内福治郎 棟梁、彫師は《木下頼定》師による作品。

平成9年、平井の現だんじり新調に伴い、丸嶋が購入しました。
尼崎の祭礼における一番の見せ場『山合わせ』に対応するべく、いわゆる『尼崎型』の様に改修されてはいましたが、だんじり本体はほぼ原型を保った状態で曳行されていました。

今回の修復は、だんじり購入以来初めて、そのシルエットを大きく変更する改修となりました。
修復大工《大下工務店》、修復彫師《辰美工芸》により、大屋根・小屋根の獅噛み三面、大懸魚2面、台木などを新調交換。

ちょっとお写真でそれらを見て行きましょうかね〜。
大屋根獅噛みです。

大屋根正面懸魚です。

地元・尼崎にちなんだ図柄で、『尼崎城と城主』と言うのだそう。
かつての尼崎城の南側は海に面しており、船を直接横付け出来る構造だったそうで、この彫物にも丸嶋の船が沖を行き交う様子が彫り込まれていますね。
もう一つ、新調交換された部材の中で、尼崎にちなんだ題材が彫り込まれています。
これは台木の後部に『享保の象行列』という場面。

享保13年(1728年)、八代将軍・徳川吉宗に献上する象が2頭、ベトナムより長崎に到着し、そこから江戸まで陸路を輸送する事になったのですが、その内1頭が長崎で病死してしまい、残りの1頭を何としても無事に江戸まで送り届けるよう、輸送路にあたる各藩の役人の苦労や負担は大変なものとなった様であります。
それは尼崎藩とて例外ではなく、長崎出発から1ヶ月余りにわたり、情報収集や受け入れ準備に奔走したと言われています。

いざ象が通る当日、近隣住民に出されたお触れには事細かな規制が書かれていたそうですが、その中に、鐘や太鼓などの大きな音を出す仕事は象が通り過ぎて尚しばらくは再開するな・・・などと書かれていたそうです。
まぁね、この3月4日はだんじりのお披露目の日。
江戸のお殿様に献上する象も通らないので、丸嶋のだんじりはお昼前から思い切り鳴物を鳴らしながらの曳行が行われました(←当たり前じゃ)
こちらは小屋根の懸魚。

そして大屋根後面(主後)と、小屋根の獅噛みのコラボ。

ええ顔つきの獅噛みですよね。
こちらは彫り替えられるまえの獅噛み。

新調当時からこのだんじりの『顔』として、曳行される地域や道、それに人々を見据えてきた獅噛みですが、今回お役御免で交代となりました。
この先代獅噛みは《相野》の作品を参考に木下頼定 師が彫られたもの・・・と言われています。
さて入魂式リポートのブログでも触れましたが、この『築地地区』は堺市から嫁いできただんじりが、共同小屋でまさに『軒を並べて』現存しています。

ここ築地地区では昭和の終わり頃から平成の初期頃にかけて、祭礼時は隣接する『貴布祢地区』からだんじりを借り受けて曳行している町が多くありました。
小嶋と丸嶋は自町でだんじりを保有していましたが、本一は貴布祢地区の北出からだんじりを借りて祭礼をしており、平成元年に堺市の多治速比売神社に奉納されてあっただんじり(堺市・和田の先代)を購入。

昨年、晴れてだんじりを新調しました。
本三は中在家よりだんじりを借りて祭礼をしており、現だんじりは平成20年に堺市・檜尾から購入。

本五は平成6年に堺市の菱木山田より購入。

大官町はかつて西櫻木よりだんじりを借りて祭礼をしており、現だんじりは平成5年に堺市・宮山より購入。

南浜は平成9年に堺市・上より購入。

そして丸嶋は先代だんじりを神戸市灘区の新在家へと嫁がせた後、平成9年に現だんじりを堺市・平井より購入しています。

正にかつて、堺市で活躍していただんじりが一同に集まり、一ヶ所で寄り集まって暮らしているかのよう。
その様子はさながら『堺市だんじり歴史資料館・別館』とでも名付けたいぐらい。
ちなみに同じ小屋に収まるこちら、貴布祢地区の東櫻木は、現だんじりに至るまでの間、丸嶋よりだんじりを借り受けていたそうで、『お互いそれぞれ歴史あり』といった感じでしょうか。

今回の改修で大きく姿を変え、イメージを一新した丸嶋のだんじりですが、これからも末長くこの地で愛され、大切に守り伝えていかれる事を願っています。

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