映画『マンハント』見終わる

今回はワタクシがこのブログを引き継いでから、最も写真の少ないブログとなります。
あらかじめご了承ください。
福山雅治主演、ジョン・ウー監督の映画、『追補〜マンハント〜』を鑑賞して来ました。

なぜなら、この映画に『だんじり』が登場するからです。
一昨年の5月のブログで、この映画について少し触れているのを覚えておられますか?
そう、この映画に登場する『だんじり』とは、鴫野南之町、天王田、今福北之町などのだんじりが名を連ねる、大阪市の『城東地車聯合』の各町なのです。

一昨年の5月に行われた『城東聯合春まつり』の時に、映画スタッフ、出演者が城東区へ来て、実際にだんじりに乗ったり触れたりして、その感触を確かめておられまして、撮影はその2ヶ月後の7月。
祭礼本番とは別の撮影日を設定し、大阪城公園、新鴫野橋あたりに7台ほどのだんじりを運び込んで行われました。
当日は城東地車聯合から700名の参加者をエキストラとして出演させ、ハリウッド映画の巨匠、ジョン・ウー監督の指揮のもと、撮り直しに次ぐ撮り直しで撮影は3日間にも及んだと聞いています。

当日は一般参加者の撮影禁止という事もあり、その撮影風景を見て頂けるものはないのですが、主演の福山雅治さん演じる大阪府警の刑事と、チャン・ハン・ユー演じる無実の罪を着せられ逃亡する弁護士との息詰まる場面が、連なるだんじりと、下を流れる運河と、遠くに見える大阪城をバックに繰り広げられました。
あれから1年半・・・
大阪のみならず、国内のあちこちで大規模な撮影がされていた映画が完成し、今年の2月に全国一斉ロードショーとなりました。
ワタクシは終映間近の平日を利用して、ほんのつい先日、鑑賞して来ました。
お目当てはだんじりだけじゃありません。
ワタクシ信濃屋、何を隠そう『だんじり』の次に好きなものが『芸事』。
しかもここ数年、ドラマや映画や舞台といった『お芝居』にどハマりの状態でね。
ジョン・ウー監督の映画といえば、『三国志』の赤壁の戦いを描いた『レッドクリフ』が記憶に新しいのですが、そのアクションと大掛かりな演出で見る者の度肝を抜くのがお得意な監督であります。
映画そのものの魅力を体感しに、いざ、スクリーンの前へ。
ストーリーを簡単に説明すると、大阪の大手製薬メーカー・天神製薬の顧問弁護士(演:チャン・ハン・ユー)ある日、無実の殺人の罪を着せられ、逃亡する事に。
それを追う大阪府警の警部(演:福山雅治)は、追跡中に何度も訪れるその弁護士との接点の中で、どうやら彼が無実である事に気付き始め、真犯人と、そして彼を嵌めた真の黒幕の存在を突き止める・・・
という、なかなかハードボイルドなストーリー。
これはかつて、日本映画界のスーパースター・高倉健が主演を演じた映画『君よ憤怒の河を渡れ』のリメイク版。
ジョン・ウー監督による様々なアレンジと、大阪を舞台にしたスリリングでエキサイティングなアクション・シーンがふんだんに盛り込まれ、全く別の作品に仕上げたと言っても過言ではないでしょう。
そしていよいよ、だんじりの登場場面。
実は事件に関与しているもう一人の警部が、犯人追跡のさなか、だんじりが集まって道路を塞いでいる現場にブチ当たってしまい、足止め。

一方、追われる弁護士は天神製薬の社長(演:國村隼)と直談判するため中之島のカフェを訪れるが、製薬会社が送り込んだ殺し屋の銃撃に遭い、水上バイクで大川へと逃亡し、現場に居合わせた福山雅治の演じる警部も水上バイクで追跡。
変わって大阪城公園ではだんじり祭の真っ最中。
國村隼の演じる天神製薬の社長は、鴫野南之町のだんじりに乗り込んでご満悦。
大阪城へと向かうだんじりが渡る新鴫野橋の真下へ、水上バイクでやって来た二人。
やがて弁護士は水上バイクから橋へとよじ登り、だんじりの連なる列と、曳き手と、ギャラリーでごった返す中に紛れ込み、行方をくらます。
遅れて橋の上へと上がって来た福山雅治がだんじりの列の中へと身を投じるも、弁護士の姿は消えた後だった・・・

↑パンフより一部拝借
という場面。
ワタクシ個人の感想ですが、思っていたより、だんじりの場面が長く、また有効に使われていました。
また複数のだんじりが連なる様子を、ハリウッド映画の監督が撮るとこうなるのか!…という場面や、その向こう側にそびえる大阪城など、世界的なプロが表現するだんじりとはこういうものだ!・・・というものを見せられた感じでした。
思えばこの映画の中に登場する『大阪』は、実在する『大阪』とは少し違っている様で、電車は右側の線路を走っていたり、天守閣を見下ろせるビルがあったり、登場人物の誰一人として大阪弁を喋っていなかったりと、どこか異世界の中にある『大阪』である様な気がしました。
まさにリアルとファンタジーの境目にあるのが『映画』という世界なのだ・・・と言わんばかりです。
モチロン、撮影に使われただんじりは城東区のだんじりですが、行われていた祭礼は、『だんじり in 大阪城』でもなく、城東区の祭礼でもなく、どこにも実在しない『だんじり祭』でした。

↑パンフより一部拝借
もしかしたら映画そのものは、だんじり抜きでも成立したかも知れません。
しかし、だんじりを登場させた事で、大阪を舞台にしたリアリティが倍増した事は間違いありません。
世間一般の映像媒体としてのメディアが『大阪』を取り上げる時に、『だんじり』を含めて取り上げる事など滅多にありません。
それだけに今回こうしたハリウッド映画に於いて『だんじり』を起用し、だんじりを上手く取り入れた映像づくり、作品づくりがなされた事は、素直に喜ばしい事です。
またそれを実現するには、『城東地車聯合』の様な、一人の強力なフィクサーが存在し、こうした撮影に協力を惜しまない組織の存在も、大きいだろうと思います。
せっかく映画やメディアに取り上げたいという申し入れがあっても、だんじりを運営する側にそれを受け入れ、協力し、実現までこぎつけるだけの自力も必要な話です。
今回の映画『マンハント』に、こういう形で『だんじり』が活躍できた事は、決して当たり前ではないという事。
そして、さらに『だんじり』という祭礼文化を、世間一般に認知され、印象づけて行くには、これに続く第二、第三の活躍があって欲しいと願うばかりです。
ジョン・ウー監督自身も、この映画の中の『だんじり』の場面は印象深いと語っておられましたが、だんじり愛好家であるワタクシ個人としても、『だんじり』をこんな風に扱ってもらえて嬉しいと伝えたいです。
また何か、こんな形で『だんじり』が映像メディアで活躍できる日が来ることを願って・・・
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