茶屋のだんぢり漫遊録

目次

持ち味を失わないだんじり




各地の秋祭シーズン真っ只中でございます。

先だっての台風19号は、関東一円に甚大な被害をもたらしましたが、幸いにも京阪神はさしたる被害も受けずに済みました。

しかしながら、10月12日(土)に予定されていた各地の秋祭は、軒並み中止となってしまいましたね。

自然の猛威が相手だけに、最大限の警戒を解く訳にも行きませんでね、こればっかりは致し方のない事かも知れません。




さてブログの方はまたまた季節を逆戻り。

7月の頃のお話。

前回は守口市・南十番の話題をお届けしましたが、今回はその南十番の翌日にお披露目を行いましたこちらのだんじり。



東大阪市は、横沼のだんじり

昨年の11月より《大下工務店》にて改修を行なっており、7月15日(月祝)に入魂式ならびにお披露目曳行が行われました。

横沼のだんじりは製作年代はハッキリしていませんが、おそらく明治の中期頃の製作と思われ、大工は不詳ですが、彫物は《辻友》辻田友次郎による作品。



正面車板の夫婦龍と、見送り三枚板はなかなか見応えのある作品。



実はこの横沼のだんじり、ワタクシ自身は20代の頃から大変お世話になっているのですが、その出会いは平成2年の5月

『東大阪ふれあい祭り』での事でした。



ちょうどその当時、横沼のだんじりは平成元年に《大下工務店》にて最初の大改修を終えた直後でしたが、そんな事も知る由もない当時のワタクシ(←高校生:だんじり見て回り初心者)は、その美しい姿見と密度の濃い彫物、そしてお囃子の音色すべてに見惚れてしまい、

『東大阪にもこんなだんじりあるんやなぁ』

と思った次第。




『最初の大改修』と申し上げたのは、実はこの横沼のだんじり、その後も幾度となく改修を重ねて参ります。

平成8年5月、同じく《大下工務店》にて2回目の大改修の時には、大屋根・小屋根の下に枡組を施して、背を高くしました。



ワタクシが本格的に横沼のだんじりと関わりを持ち始めたのが、実はこの年。


そして次の改修は平成16年

この時には脇障子、隅障子、土呂幕を新調交換。



土呂幕は当時話題となっていた『一枚物』と呼ばれるもので、側面(平の面)を中柱で仕切らずに、一枚の図柄で構成するという形式。

新しい様式を取り入れながらも、不思議なことにこのだんじり、姿見全体から醸し出す雰囲気は、さほど変化がないのであります。

つまり、『大きく変わってもたなぁ』とか、『もう別のだんじりやなぁ』…て思うぐらい、シルエットが変わってしまうって事がないんですよね・・・




平成元年に行われた初めての大改修が『原形修理』(屋根の破風形は変わっていたかも…)であったことを踏まえると、ワタクシが生まれて初めて見た横沼のだんじりは、原形をとどめたまま、新品同様に生まれ変わった姿でした。

その時から二度の改修を経て、平成8年には背を高くしたにも関わらず、そんなに大きく変わった印象を与えない・・・



つまり、このだんじりが元々持ってる雰囲気を壊さないっていうのが、改修の際にも根底にある様に思えるのです。

あくまで『そう感じる』…って話ですよ・・・


そして迎えた今回の改修。



今回は、獅噛み三面と、正面と後面の懸魚一式を彫り替えた事に加えて、大屋根をひと回り大きく新調交換しました。

つまり、破風の形を変更したのです。



以前より、中央の棟、いわゆる『むくり』が大きくなりました。


それでも、さほど変わった印象を受けなかったんですよねぇ。

このだんじりの元来の持ち味は、生きてる。

別のだんじりになってない。



大改修を経て、大きく変化するだんじりが多い中、この横沼のだんじりは目立たないけどものすごい異彩を放っていると思うのであります。



さてさて、そんな横沼のだんじり、7月15日(月祝)に入魂式が行なわれたのですが、元々予定されていた入魂式は7月14日(日)でした。

当日は各地の夏祭が行われる日で、横沼と繋がりのある各地のだんじりも祭礼日を迎えているという事で、神社では入魂式のみ執り行い、記念式典などは行わずにそのまま町内まで曳き帰るという予定でした。



しかし、事前に入魂式の日程が1日ズレて15日(月祝)となった事で、祭礼日を終えた各地の団体も列席が可能となり、入魂式と併せて記念式典も挙行できることとなりました。



そして何より、1日ずらした事で、前日まで降り続いていた雨が一転、この日は朝から気持ちの良い晴天が広がりました。

たくさんの地域から駆けつけた各地車団体の方々にお祝いされて、改修を終えた横沼のだんじりは、無事に神社からの帰路につき、町内をお披露目曳行して回りました。




さて、あれから日にちが経っておりまして、横沼ではもう秋祭も終えました。


刻一刻と時間が過ぎ去る中、各地の祭礼もひとつひとつ終えて行き、秋祭もシーズンもこの週末、いよいよ最後のピークデーを迎えようとしています。

当サイトユーザーの皆様方におかれましては、ゆく季節を惜しむかの様に、盛大な秋祭をエンジョイされますよう、願っております。



横沼の皆さん、この度は地車改修、誠におめでとうございます。


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