茶屋のだんぢり漫遊録

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平野區の新調だんじり入魂式




少しでも前向きに明るいニュースを探そうとするのですが、それを嘲笑うかのように連日連日、新型コロ助のニュースで全世界が持ちきりで、明るいニュースが見当たりません。

特にイタリアをはじめとするヨーロッパ諸国の爆発的感染と、それに伴う都市部の封鎖は、ちょっとワタクシの予想を超える事態となってしまいました。

さらに、日本においてもオリンピックが延期と決まった翌日から急に東京都での感染者数がうなぎ上りに上昇を始め、いよいよもって都市封鎖という事態が現実味を帯びて来る事態となりました。



こんな情勢下ではありますが、だんじり界ではひとつ、お伝えしておきたいニュースがあります。

世間一般的に見れば、時期が時期だけに批判の対象とされかねない事なのかも知れませんが、ここではそういう『良し悪し』で論じる事なくお伝えして行こうと思います。


3月22日(日)


神戸市東灘区・御影地区平野區(上御影)が、このほど新調だんじり完成に伴い、入魂式ならびにお披露目曳行を執り行いました。



この日を迎えるにあたり、平野區関係者の皆さんが、熟慮に熟慮を重ねて決行と判断された事を、ワタクシは良かったと感じているし、この日に参加された方々の中から、結果的にこの先も感染者が出なければ、これはひとつの『成功例』と申し上げる事が出来ると思います。



さて当日・・・

すでに3月7日(土)に工務店から町内へと搬入されており、この日は小屋に納められている状態からの出発。



午前8時に小屋のシャッターが開けられると、そこには飾り付けを終えた新調だんじりの姿が。

搬入の日から一貫して、だんじりの顔と言える『獅噛み』は、ご覧の様にマスクで覆われています



時節柄、『コロナ対策』と色んな方々が申しておりました。

昨年4月に行われた住之江區の入館式の時もそうでしたが、入魂のための神社までの道中は、鳴物を鳴らさず人も乗り込まず、静かに移動します。



御影地区としてはおそらく最大サイズとなったであろう平野區の新調だんじり、弓弦羽神社への参道は慎重に通過。



東灘区の中でも、大型のだんじりがひしめく住吉地区のお隣に位置する御影地区は、地域の道幅が狭いためにそれほど大型のだんじりはこれまで存在しませんでした。

それは道幅だけではなく、氏神であるこの弓弦羽神社の参道が、いわゆる『木の枝のトンネル』である事も関係しているんじゃないですかね?




生まれて初めてここ弓弦羽神社の宮入りを見に来たのは平成の最初の頃だったのですが(祭礼日も5月第2土日だった頃)、当時は神戸のだんじり祭と言えば住吉や本山しか知らなかった当時のワタクシにとって、御影地区のロケーションや宮入りの様子はとても新鮮で、いっぺんに好きになったのを覚えています。

その当時と変わらない弓弦羽神社の境内へ、新調だんじりはゆっくりと到着。




ここで、永らくヴェールに包まれていた『獅噛み』が、製作を担当された彫師・木下健司 師、自らの手によってそのヴェールを取り払われ、お披露目されました。



近年新調されただんじりの中でも、取り分け木の厚みを持たせてあり、これは付け木ナシの1枚モノ。

木下健司 師による渾身の獅噛みであります。




さて、午前9時を回りまして、拝殿の中では入魂式が執り行われました。



境内には近郊近在から多くの見物客が訪れ、新調だんじりの姿や彫物をしきりにカメラに収めていました。

特にこの日も、大阪府と兵庫県の間の往来自粛が要請されていましたが、だんじり好きにとっては居てもたってもおれないでしょう。



それを『不要不急の用事やねんから自粛しとけ』・・・とは、ワタクシからはとてもじゃないけど申し上げられません。

だんじりを見たい気持ちはめちゃめちゃ良く理解できますので。



入魂式を終えただんじりは初めて鳴物が入り、平野の会館まで『お披露目曳行』となります。



だんじりの前には製作を担当した《吉為工務店》の吉野寿久 棟梁と、彫物を担当した《木下彫刻工芸》の木下健司 師を乗せ、威勢の良い掛け声とともに新調だんじりが動き出しました。



1月頃にその存在が確認された『新型コロナウイルス』が、2月には日本でも徐々に感染を広げ、3月には全国の学校が一斉休校、不要不急の外出自粛など、急速に情勢が悪くなってしまいました。

そうした息苦しい空気感を吹き飛ばすかの様に、腹に響く鳴物とともに曳行されるだんじり。



やっぱり、ええモンです!

それは間違いない。


世間が自粛してるのに、こんな時にだんじりとは何や!・・・て、世間一般ではそう言われても仕方のない事かも知れませんが、まだこの日の時点では現在の様な感染拡大も抑えられていて、ワタクシ的には
『やれて良かった』
と思っています。



あれからまた1週間以上が過ぎて、みるみる内に情勢が悪くなった現在では、もしかしたら行えなかった事かもしれないと思うと、このタイミングで行えた事を、喜ぶべきだと思うのです。


この平野區の入魂式ならびにお披露目、さらに平野區の新調だんじりに関しては、まだもうちょっと書き綴りたい事もあるので、次回も引き続きこの話題をお届けしたいと思います。


今回はひとまずここまで。



信濃屋お半悠遊!だんじり録
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